1. HONDA GORILLA 01

80年代当初、小学生の頃からバイクが好きだった。

目覚めたきっかけは覚えていないが、実家の閑静な住宅街に暴走族がコールしながら出没すると、僕はその音をラジカセに録っては聴いて悦に入っていたという、ちょっと頭のおかしな少年だったかもしれない。

ただしその後は空前のレーサーレプリカブームもあって次第にレーサーに興味を持ち、僕はいわゆる暴走族になることは無かった。

またレーサーとは相反するが、バイクで遠くへ旅することにも憧れるようにもなった。

僕は当然のように16歳になるやいなや、中型免許を取得した。

しかしバイクを買う資金はなく、乗りたい気持ちだけが日毎つのるのだった。

そんなある日、母方の従兄弟の兄さんが乗っていたHONDA GORILLAを譲ってくれるという話が持ち上がった。
もう眠れないくらい嬉しかったことを覚えている。

譲り受ける日までが本当に待ち遠しかった。

いよいよ当日、従兄弟の家までは車で1時間ほどの距離、母親の軽自動車でGORILLAを引き取りに行った。
母親のSUZUKI ALTO(なんと2st)は今のようにハイトのある軽自動車ではなく、マシンを横に寝かせて無理やり積み込んだ。

そうしてついに手元に自分のマシンがやってきた。

6V時代の2.6psという恐ろしくロースペックマシンだったが、夢は無限に膨らんだ。

ホンダのモンキー/ゴリラといえば言わずと知れたホビーマシンで、ありとあらゆるアフターパーツが販売され、それこそアフターパーツだけで1台作れるという稀な存在。

「ちっこいハーレー」と呼ばれるだけに、幾らでもお金をつぎ込めるが、当時の僕はバイトもそれほどしておらず、お金はバンド活動の方に使っていたのでGORILLAはノーマルのまま乗り続けた。

どちらかというと消耗した純正部品を地元のバイクショップで取り寄せ、エンジンまで開けてレストアする方に情熱を向けた。

そんな中、つるんでいた仲間もみんな免許を取り出して、最新のスクーターを手に入れた。

折しもスクーターにもハイスペック競争の波が押し寄せ、JOG-ZやSEPIA-ZZなど7.2psマシンが出揃う中、2.6psのGORILLAでは皆で普通に移動するにも足を引っ張る状況だった。

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